発電量ナビ

発電量ナビ♪では地熱発電の発電方法の仕組みと原理、メリット・デメリット、日本・世界の地熱発電の発電量についてイラスト図解付きで入門者向きにわかりやすく解説しております。

◆地熱発電の発電量・メリット・デメリットの解説(もくじ)

◆地熱発電とは?

 地熱エネルギーを利用する地熱発電は、将来の主力エネルギー源となりうる世界的にも大きな期待がかけられている再生可能エネルギーの一種じゃ。

 地球の内部の最も深い部分にある「核」の温度が約6000度の高熱を持っておることは理科や科学で学んだ事がある方も多いじゃろう。

 地球はこの核を取り囲む「マントル」と呼ばれる層があり、更にマントルの外側を包み込む「地殻」と呼ばれる層があり、その上に我々が日々過ごしておる「地表」がある。

 この地球の中にある地熱は地表から2~3km程度地下へ掘り進めると200度を超える高温地帯が確認されるケースがあり、その部分は地殻が薄く地熱が発生しやすい状態である事を示しておる。

地熱発電と地熱エネルギー(図)

 このように地表に近い場所で高温の地熱を地域を特定し、地熱エネルギーを利用して発電を行う仕組みを備えた発電設備が地熱発電所と言う訳じゃ。

◆地熱発電の種類・発電方法

 地熱発電による発電方法は、高温の蒸気を利用してタービン発電機を稼動させることで電気を産み出す仕組み。

 これは火力発電や風力発電、そして原子力発電などと同じ発電システムじゃ。

 その為、地熱エネルギーをタービンの動力に利用する地熱発電では、まず始めにボーリングによって地下内で熱水や蒸気が溜まっている場所を見つけ出すことが不可欠となる。

 尚、熱水や蒸気などの地熱エネルギーを地熱発電に利用する発電システムの種類は大きく分類すると3種類の発電システムが挙げられる。

【地熱発電の種類】
番号発電方法の種類地熱発電の原理
ドライスチーム発電地下から上昇していくる蒸気をタービン発電機に直接取り込んで発電を行うシステム。
フラッシュサイクル発電地下内の熱水を汲み上げ低圧力タンクで圧力を下げる事で水を一気に蒸発させてタービン発電機を稼働させる発電システム。
バイナリーサイクル発電水よりも沸点の低いアンモニアやペンタン・フロンなどの液体を媒体とし120度~200度前後の熱水を汲み上げ熱交換器を利用して液体を蒸発させ、タービン発電機から発電するシステム。

◆日本の地熱発電所の発電量

 日本はほとんどの地域で温泉が出ると言われるほど地表近くまで地熱エネルギーが到達している地熱の豊富な国じゃ。

 これは世界有数の火山国であることからも解るのぉ。

 その為、化石燃料などの地下資源の乏しい日本では再生可能エネルギーの中でも地熱エネルギーの将来性に対する期待が徐々に高まってきておるのじゃ。

日本の活火山数は世界第3位(図)

※資料:NEDA

 地熱発電を行うには活火山(活動状態にある火山)の個数が重要な資源の指標となっておるが、日本は上図を見ても解る通り活火山数及び地熱資源量共に、世界の中でインドネシア・アメリカに次ぐ3位となっておる。

 地熱発電による発電量のトップはアメリカ(詳しくは世界の地熱発電量の項にて後述)じゃが、日本は地熱資源という観点で言えばアメリカに負けないポテンシャルを秘めた土地であると言えるのぉ。

 尚、日本には現在18箇所の地熱発電所が稼働しており日本最大の地熱発電所は九州の八丁原発電所(はっちょうばるはつでんしょ)で発電量は11万kw(発電認可出力)となっておる。

 また、自家用発電所を含めた日本全国の発電量は約54万kwじゃ。

※日本の地熱発電所の発電量の合計は約54万kw

 原子力発電や火力発電と比べると発電量はまだまだ小さいのが現状ではあるが、昼夜や天候の影響を受けずに電力を産み出す地熱発電は日本の特性を活かす為にも今後期待される分野であることは確かじゃろう。

◆世界の地熱発電による発電量のシェアは何パーセント?

 日本の地熱発電に続いて世界の地熱発電についても確認しておくとしよう。

 現在、世界中で地熱発電によって最も多くの発電量を発電している国はアメリカじゃ。

 アメリカは国内の発電量のおよそ0.2%程度にあたる約260万kwを地熱発電によって発電しておる。

 また、国内の全ての発電量の中で地熱発電が占める割合が最も高い国はフィリピンでフィリピンは国内の発電量の約2割を地熱発電で賄っている。

 フィリピンは政府が地熱発電の推進を公表しておる事もあり、投資家や事業主が地熱発電への投資を行なっている為、今後は更に地熱発電大国となっていく事が予想されるのぉ。

 尚、世界全体の全ての総発電量に対して地熱発電による発電量が占める割合は1%未満。

※地熱発電による発電量は全世界の総発電量の1%未満(実質0.3%強)

 現実的には地熱発電による発電量は増加しておるものの、地熱発電以外の発電システムも大きな成長を遂げておる為、全体のシェアでは1%未満に留まっておるのが現状なのじゃ。

 地熱発電による発電量が大きく伸展できない原因には発電所の建設に関して幾つかの課題・問題が背景にある事も覚えておく必要があるのぉ。

◆地熱発電の利点・3大メリットについて

 地熱発電のメリットは大きく3つのメリットを挙げることが出来るじゃろう。

 まず一つ目の地熱発電のメリットは、地熱そのものはほぼ無尽蔵にあるという点じゃ。

 地下内の熱水や地熱資源は地域ごとに枯渇する可能性は確かにある。

 しかし1911年に世界で初めて建設されたイタリアの「バル・デル・ディアボロ地熱発電所」が現在もイタリア国内の100万世帯の家族に電力を供給し続けておる事からも地熱エネルギーは簡単に枯渇することのない優良な資源であることがわかるのぉ。

 続いて2つ目の地熱発電のメリットは、環境問題で大きな注目を浴びておるCO2排出量が極めて少ない事が挙げられる。

 地熱発電によるCO2排出量は化石燃料を原料とする火力発電と比較すると約1/20程度しかCO2を排出しない。これは大きなメリットじゃ。

 そして3つ目の特に注目しておくべき最大のメリットは地熱発電は天候や時間帯の影響を受けにくいエネルギー資源であることが挙げられる。

 現在、原子力発電に代わる安全性が高く環境に易しい自然エネルギー資源へ大きな注目が集まっておるが、その多くは環境や天候の影響を受けるものが多い。

 代表的な太陽光発電では太陽が照りつける晴天の日中であれば期待する発電量が得られるが、曇の日や太陽が沈む夜間は十分な発電を行うことができない。

 風力発電に関しても風が弱い日や、逆に台風などで風が強すぎる日は発電が出来ない為、天候の影響を大きく受けてしまうことになるのぉ。

 地熱発電は昼夜を問わず地中内の地熱エネルギーを24時間利用が可能であるため、必要な時に電気を生み出せるというとても大きなメリットがある点は見逃す訳にはいかないのぉ。

地熱発電の3大メリット(図)

◆地熱発電のデメリット

 地熱発電のデメリットは幾つかの問題点があるが大きく分類すると3つのデメリットを挙げることができるじゃろう。

【地熱発電のデメリット】
①調査にかかる時間と費用の問題
②自然破壊の問題
③地域産業・宿泊施設に関わる問題

 ①の調査にかかる時間と費用の問題は、地熱発電所を建設する為には地質調査や地盤調査など地中の調査を何年もかけて行う必要があり、また地中の地熱エネルギーが存在する層に達する為にはボーリングと呼ばれる穴を掘る必要があるという問題じゃ。

 ボーリングを行う前には一定基準内の事前調査を行った上で地面に穴を掘ることになるが、実際にボーリング作業を行った後に適切な建設場所かどうかの判断が見極められるため、場合によっては何度もボーリング作業を行う事になってしまうケースもあるのぉ。

 このように発電所の建設に関わる莫大の調査時間や建設費用は地熱発電所を設置するまでの大きな課題点であると言えるじゃろう。

 続いて②の自然破壊の問題については、地熱エネルギーが埋蔵しているとされるエリアの9割以上は国立公園などの自然保護区域に指定されているケースが多いという問題じゃ。

 水力発電に利用されるダム等は国立公園内に設置されておるケースも多くあるが、地熱発電に関しても今後は地熱エネルギーの大半が埋蔵していると予想される国立公園内などに建設ができるかどうかが大きな課題となっておるのじゃ。

 最後に③の地域産業・観光産業に関わる問題に関しては、地熱エネルギーの埋蔵量が多い地域には既に温泉街などの観光地が存在し、発電設備の景観に関する問題や温泉のお湯が枯渇する可能性が検討されるなど、地域産業からの大きな反発を受ける可能性が高いという問題がある。

 実際に地熱発電所の建設計画が地域の観光業を主体とした強い反発を受けて建設が中止となった地熱発電所も存在しておる。

地熱発電のデメリット・問題点(図)

◆日本の地熱発電の将来性と課題

 日本国内で最後に建設された地熱発電所は1999年に稼動を開始した八丈島の「八丈島地熱発電所」じゃ。

 地熱資源量が世界3位と豊富な資源量を誇る日本ではあるが、1999年以降は地熱発電による発電量は横ばい。更に地熱発電所の建設は全て中止され現在に至っておる訳じゃな。

 尚、政府が開発予算として組み込んだ「地熱技術開発費」は1982年が最も高い予算がついておったのじゃが2003年には予算が「ゼロ」となっておる。

 地熱発電は前述した通り、発電所の建設に関して多くの課題を抱えておるのは事実じゃ。

 しかし日本よりも地熱資源が乏しい多くの国が難しい問題点を乗り越えて地熱発電の開発を一歩ずつ進めている中、日本も目の前に眠る資源の活用を再度検討すべき時期に来ているのかもしれんのぉ。