水力発電の仕組みは、地球の重力の働きを活かし水が高いところから低いところへ落ちる際のエネルギーを利用し水車を回転させ、水車と直結している発電機を動かす事で電気を起こす仕組みとなっておる。
水力発電は枯渇することなく循環し続ける自然エネルギーであり、日本では最大の再生可能エネルギーの一種でもあるのじゃ。
水力発電の歴史はとても古くメソポタミア文明では既に現在の水車とほぼ同じ原理を利用した横向きの水車が利用されていたという記録もある。
水が落下する際のエネルギーを利用するシンプルなシステム構造の水力発電はCO2の排出量が圧倒的に少ないという大きな利点を持つ発電システムであり世界的にも大きな発電量を誇る現在では欠かすことの出来ない発電システムなのじゃ。
水力発電による電気の発電方法は、水力発電機内のタービンブレードと呼ばれるブレードを流水の力によって回転させることでタービンを動かす発電方法となっておる。
尚、発電量に大きく影響を与えるのは、水量と落下する際の高さ(落差)がポイントとなっておる。
落下する際の落差が大きく、かつ大量の水量を流し続けることが可能な場合はとても大きな発電量を発揮することが可能となる。
そのため、水力発電所の多くは水量の多い大きな川に建設されており川を塞き止めてダム式水力発電所が設置されておる地域が多くある訳じゃ。
ダムに一度溜め込んだ水は水門を開けることで一気に水を落下させることで可能となっており、効率が良く大容量の電気を生み出せるようになっておるのじゃな。
尚、水力発電所はダム式水力発電所だけでなく電気の消費量が少ない夜間電力を利用した揚水式水力発電所や川の上流部分で水を取り込み水路を通して水を高い位置でキープし、下流部分との落差を意図的に作り電力を発電する水路式水力発電などの種類もあるのじゃよ。
【水力発電の種類】 | ||
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番号 | 発電方法の種類 | 水力発電の原理 |
① | ダム式水力発電 | 川を塞き止めて水を貯めこみダムの落差を利用して大きな発電を行う発電システム。 |
② | 揚水式水力発電 | ダム式と原理は同じだが、揚水式では高い位置と低い位置にそれぞれ貯水池を設け夜間などの電気消費量の少ない時間帯に低い位置の貯水池にある水を高い位置へ汲み上げておく。 |
③ | 水路式水力発電 | 川の途中で水を汲み取り高さをほぼ維持した水路を通過させ元の川に水を戻す水力発電システム。水路を通過してきた水は水が汲み取られた上流部の高さを維持している為、元の川に戻す際に落差が生じている点がポイント。 |
日本は本州地域の中央アルプス山岳地域を中心とした標高もそこそこ高く急勾配の山が多い地域じゃ。
年間を通しての降水量も豊富であり、川の流れも強い日本はまさしく水力発電に適している代表的な国と言えるじゃろう。
尚、注目の高い再生可能エネルギーの中では圧倒的なシェアを誇る水力発電は発電量で見ると日本の全ての電気の総発電量の約8%を占めておるのじゃよ。
※水力発電の発電量は日本の全発電所の総発電量の約8%程度
水力発電を除く、その他の再生可能エネルギーが産み出す電力は総発電量の約1%程度にしか満たない事からも水力発電が日本の再生可能エネルギーの主力となっている事は明らかじゃ。
尚、日本最大の大きさを誇る水力発電所である富山県の黒部ダムは堤の高さが何と186m。更にダムの貯水量は2億立方メートルの水量を貯水が可能じゃ。
これは東京ドームに水をいっぱいに溜め込んだ場合の160杯分の水量に相当する。
また、日本で一番の発電量を誇る静岡県の佐久間発電所は落差の調整が可能となっており最大で35万kwもの発電量を産み出す事ができるのじゃよ。
日本の水力発電に続いて世界の水力発電についても確認しておくとしよう。
世界の水力発電の規模は川の大きさそのものがまったく異なるため日本のサイズとは比較にならないほど大きな規模を誇るダムや発電所が幾つもある。
まず世界一の貯水量を誇るダムはジンバブエにあるカリバダム。このカリバダムの貯水量は最大で1810億立方メートルの水量を貯水が可能じゃ。
※世界一の貯水量を誇るダムはカリバダム(1810億立方メートル)
また、年間総発電量世界一の水力発電所はブラジルとパラグアイの国境間を流れるパラナ川に建設されているイタイプダム。
このイタイプダムはコンバインダム(重力式コンクリートダム+アースダム複合型)に分類される複数のダムの混合ダムで総発電量は1400万kw。年間発電量は世界一の950億kwにも登るのじゃ。
尚、ブラジルとパラグアイの共同出資で建設されたイタイプダムが発電した電力は平等に分配され両国の電力の基盤となっておるのじゃよ。
※世界一の年間発電量を誇るダムはイタイプダム(年間発電量950億kw)
続いて瞬間的な発電能力世界一の水力発電所は中国の巨大な川で知られる長江に建設された三峡ダム。
三峡ダムは2009年に完成した新しいダムで貯水量は390億立方メートル、最大発電量は2250万kwにも登るのじゃ。
尚、年間最大発電能力は1000億kwとなっており、能力的にはイタイプダムを凌ぐ事実上世界最大規模の水力発電所であると言っても良いじゃろう。
※世界一の発電量(発電能力)を誇るダムは三峡ダム(最大発電量2250万kw)
水力発電のメリットは大きく3つの長所を挙げることが出来るじゃろう。
まず一つ目の水力発電の長所は、川の流れを利用する水力エネルギーは太陽がある限り半永久的に続く循環サイクルである為、枯渇する心配はないという点じゃ。
川は雨水や湧き水が集まって流れを作るが、太陽が地表や湖、そして海の水を蒸発させ雲を作り、雲は雨や雪となって地表に水を戻す。
この自然の循環サイクルが続く限り水力エネルギーが枯渇する可能性がないという訳じゃな。
続いて2つ目の水力発電の長所は、CO2排出量が極めて少なく環境面にやさしいエネルギーである点が挙げられる。
水力発電によるCO2排出量は地熱発電や風力発電などと同じく僅かなCO2しか排出しない。世界的にも環境問題が注目を集める中、これはやはり大きなメリットじゃ。
そして3つ目の長所はダム湖を利用する場合に発電量をある程度調整する事が可能となる点が挙げられる。
静岡県の佐久間発電所のように落下する距離(落差)の調整を行い電力需要の大きな時間帯は発電量を高くし、夜間などの電力消費量の少ない時間帯に水を貯水して必要時に備えるなどの調整が容易に行える点は水力発電の大きな利点であると言えるのぉ。
前述した揚水式水力発電が広く普及した背景には、この発電量の調整が可能というメリットが大きく関与しておる。
電力消費量の少ない夜間に電力を使用してポンプで水を上流の貯水池に汲み上げておき、電力の需要が高くなる日中に備えておく事ができるのは発電量の調整が可能な水力発電ならではのシステムであると言えるのぉ。
水力発電は世界的にも認められた優良な再生可能エネルギーであることはここまで解説してきた通りじゃ。
しかし、水力発電もまた幾つかの問題点があり、今後乗り越えて行かなければいけない課題も多く残っておる。
ここでは水力発電の問題点として大きく2つのデメリットを挙げて確認していくとしよう。
【水力発電のデメリット】
①環境破壊・自然破壊の問題
②住民の暮らしの問題
①の環境破壊・住民の暮らしの問題は、水力発電所を建設する為に発生する最も大きな問題点のひとつじゃ。
川に建設する水力発電所はダムの建設に伴い森林地帯を大きく切り開いて建設を行う必要性が出てくる。
また川の途中にダムを設置することで上流と下流の行き来ができなくなり川に暮らす生物の生態系も大きく変化させてしまう事も事実じゃ。
またサケやマスなどの「母川回帰」の習性を持つ魚はダムの建設によって川の上流に戻れなくなる事も懸念されておる。
※母川回帰=川で生まれた魚が海に下り一定期間を経て同じ河川系に戻る習性
これらの生態系の変化は川だけの問題に限らず森全体の食物連鎖の仕組みにも大きな影響を与えることが指摘されておる。
続いて②の住民の暮らしの問題に関しては、ダムの建設によって川の水位が大きく変動する問題が挙げられる。
川沿いに暮らす農村の人々はダムの建設によって水位が大きく変化する為、農村一帯が水没する危険性を感じながら暮らしていかなければいけないケースも出てくる。
世界の発電量の項で解説した2009年に完成した長江の三峡ダムの建設では、水没の危険性がある為、実際に長江沿いに暮らす100万人以上の住民が強制移転を強いられておる。
また更に大雨によって長江沿いの遺跡の多くが水没するなど文化遺産への影響が出てしまった事実もあるのじゃ。
これらの問題点は大きな長所を持つ水力発電の建設によって生まれるデメリットとして何十年も前から大きな課題として取り上げられておるのじゃよ。
水力エネルギーは再生可能エネルギーに分類される循環系の自然エネルギーの中では現実的に唯一実用性の高い発電方法を備えるエネルギー資源じゃ。
これは世界の総発電量の中で再生可能エネルギーが占める割合においても断トツで一位の発電量であることからも理解できるじゃろう。
前述したように水力発電のデメリット・問題点は大きな課題として残っておるが、これらの問題を解決しながらCO2排出量が限りなく少ない水力エネルギーによる発電量を世界的に大きくすることが可能となれば、地球温暖化問題の大きな解決の糸口となってくる可能性もあるのぉ。
尚、日本国内の河川における水力発電設備は既に十分な電力が得られると推定される主要な川の多くは既に建設済みであり、新たに大規模の水力発電所を建設することは難しい状態となっておる。
しかし、世界的に見ればまだまだ未開発の地域が多く、もし未開発地域の中でも多くの発電量を産み出す可能性を持つと推定される河川に水力発電設備が開発された場合は世界の人口約70億人が消費する電力の全て、もしくは1.5倍程度の電力を水力発電のみで発電することが可能であるという試算も出ておる。
水の惑星と呼ばれる地球において水力発電は問題点も多く存在するが、大きな将来性を持つ再生可能エネルギーである事を覚えておく必要があるじゃろう。